※この記事には『NCIS ~ネイビー犯罪捜査班』シーズン1第10話「埋められた女(Left for Dead)」の結末を含むネタバレがあります。
エピソード基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | NCIS ~ネイビー犯罪捜査班 |
| シーズン・話数 | シーズン1 第10話 |
| 日本語タイトル | 埋められた女 |
| 原題 | Left for Dead |
| 本国放送日 | 2004年1月6日 |
| 監督 | ジェームズ・ホイットモア・Jr. |
| 脚本 | ドン・マクギル、ドナルド・P・ベリサリオ |
森の浅い墓から自力で這い出した記憶喪失の女性。
彼女が唯一覚えていたのは、「海軍の船に爆弾がある」ということでした。
現在どこで見られる?
2026年9月日確認時点では、Huluで『NCIS ~ネイビー犯罪捜査班』シーズン1が見放題配信されています。
字幕・吹替・英語字幕に対応しています。
※配信状況は変更される可能性があります。
ネタバレなしのあらすじ
森の中で生き埋めにされていた女性が、自力で地上へ這い出して保護されます。
ところが彼女は、自分の名前も過去も思い出せない記憶喪失の状態。
唯一覚えているのは「海軍の船に爆弾が仕掛けられている」という情報でした。
爆弾による被害を防ぐため捜査を始めるギブスたち。
一方、ケイトは身元すら分からない彼女に寄り添い、失われた記憶を取り戻す手助けをしていきます。
しかし少しずつ記憶が戻るにつれて、彼女が生き埋めにされた理由と、事件の見え方も変わっていきます。
ネタバレなしの感想
生き埋めから自力で脱出したうえに、自分のことは分からないのに「爆弾がある」という情報だけを覚えている。
最初からかなり強烈な導入です。
しかも彼女自身の視点でも、断片的に何かを思い出している様子が描かれる。
だから記憶喪失そのものは信じつつも、最初は正直「本当に全部忘れてる?」とは疑ってしまいました。
今回特に印象に残ったのは、記憶を取り戻すことが必ずしも「元の生活へ戻ること」にはならない点。
そして、ケイトと新しい関係を築き始めていた女性が、最後には思いもよらない道を選んでしまうことでした。
ここからネタバレあり
本当に何も覚えていないのか?
名前すら分からないため、最初はジェーン・ドウと呼ばれていた女性。
彼女は後に、爆発物関連企業BFFで働くスザンヌ・マクニールだと判明します。
物語の途中では、匂いや場所、人との遭遇などをきっかけに少しずつ記憶の断片が戻ってくる。
その描写が本人の視点からも見えるので「記憶喪失そのものが全部演技だった」とは思いにくい。
でも、だからこそ途中から別の疑問が出てきます。
今、どこまで思い出しているんだろう?
記憶が戻るたびにすべてをケイトたちへ話しているとは限らない。
最初から嘘だったのではなく、途中から「覚えていること」と「話していること」に差が生まれていく。
この微妙な変化が、後半の不穏さにつながっていました。
記憶が戻ることは「回復」。でも元には戻れない
記憶喪失なら、記憶が戻ること自体は回復です。
自分が誰なのか。
どこで暮らしていたのか。
何をしていたのか。
それを取り戻すことは、本来なら良いことのはず。
でも今回、少し怖いのは「回復すること」と「元の自分や生活へ戻れること」は別だというところです。
スザンヌが取り戻す記憶には、自分の仕事や日常だけではなく、恋人だったスティーブン・ブラウアーとの関係、彼に捨てられたこと、そして殺されかけたことまで含まれています。
記憶をなくした状態の彼女には、少なくともその憎しみはありませんでした。
それにケイトという新しい人とも出会った。
新しい人生へ進めた可能性だってあったのかもしれない。
でも「元の自分」に回復するということは、忘れていた苦しみまで自分の中へ戻ってくるということでもあります。
治ることが、そのまま幸せになることではない。
記憶喪失ものでは「全部思い出せて良かった」となりがちだからこそ、今回は少し意味が怖いです。
ブラウアー、スザンヌのこと舐めすぎじゃない?
スザンヌと不倫関係にあった、BFFのトップであるスティーブン・ブラウアー。
この人、かなり相手を下に見ていたように感じます。
まず、自分から別れを告げに行かない。
ウォルター・リヒターを代理に送り、金を渡して終わりにしようとする。
自分が向き合って話す必要すらないと思っているように見えます。
当然、妻に対しても誠実とは言えません。
妻とは別れない。
不倫相手とも自分では決着をつけない。
面倒な部分は他人に処理させる。
徹底して自分だけが傷つかない位置にいる。
そして一度殺したと思っていたスザンヌが、自分の目の前に現れる。
普通なら「なんで生きてる!?」となるところ。
それなのに彼女が「記憶がない」と分かると、そのまま二人で話そうとする。
いや、危機感なさすぎるだろ。
彼女が、警戒するに値しないんですよ、あんなことしておいたのに。
殺したはずの女性が戻ってきているのに、本当に記憶がない保証なんてどこにもない。
実際、もう思い出しています。
それでも自分ならまだどうにかできると思ったのなら、最後までスザンヌを見くびっていたのかもしれません。
「あ、思い出したな」と分かる瞬間
ブラウアーと二人で話し始めたスザンヌ。
表向きはまだ「あなたのことも覚えていません」という態度を取っています。
でも、会話が始まると空気が変わる。
自分で別れを告げることすらできなかったこと。
自分を捨てようとしたこと。
そして自分を埋めたこと。
そこまで踏み込んだ瞬間「あ、もうとっくに思い出していたんだな、この人」と分かります。
ブラウアーもようやく気づく。
もうちょっと危機感を持て。
さらにケイトも、スザンヌが知るはずのないウォルターの死について知っていることから、彼女の記憶がすでに戻っていたことに気づきます。
ここでそれまでの「どこまで覚えているんだろう?」という疑問の答えが一気に出ました。
スザンヌは、いつ復讐を決めたのか
ただ、記憶が戻った瞬間に即座に復讐を決めたわけではないんじゃないかと思います。
断片を思い出しながら、それを全部ケイトへ話さなくなった頃。
この時点では、どうするか決めあぐねていたんじゃないか。少なくとも、そう見えました。
ケイトはずっと彼女に寄り添っている。
身元の分からない状態から助け、一緒に過ごし、記憶を取り戻そうとしてくれる。
もしスザンヌの中に最初から復讐しかなかったなら、ケイトとの関係はもっと単純だったと思います。
でも実際には、友達になれそうな雰囲気があった。
だから途中までは、復讐したい、でも新しい人生へ行けるかもしれない……と、その間で揺れていたんじゃないでしょうか。
そしてブラウアー本人と会うことを決めた時に、最終的に復讐する方へ踏み切ったのではないかと思います。
もっとも、彼の態度によっては、どうするか変えただろうとは思いますが。
被害者を救う事件が、新しい事件へ変わる
NCISが最初に追っていたのは「生き埋めにされた女性を助け、誰が彼女を殺そうとしたのか調べる事件」でした。
スザンヌは明確な被害者です。
ところが真相へ近づいたあと、状況そのものが変わってしまいます。
スザンヌは自分で作った非常に不安定な爆発物を持ち出し、ブラウアーと共に死ぬことを選ぶ。
ここからはもう、新たな爆弾事件です。
NCISは最初の事件の真相には辿り着いた。でも、そこで事件が終わらない。
むしろ真相を知ったスザンヌ自身が、次の事件を起こしてしまう。
解決と同時に新しい悲劇が始まる構造なのが、かなり後味悪いです。
ケイトと普通に友達になれそうだったのに
これが一番残念でした。
ケイトとスザンヌ、普通に友達になれそうだったんですよね。
ケイトは捜査官として接しているだけではなく、かなり近い距離で彼女を支えていました。
スザンヌ側も、それを嫌がっているようには見えない。
本来は、こういう関係はNGなのかもしれませんが、もしそのまま記憶を取り戻して「酷いことをされた。でも生きていた」という方向へ進めていれば、二人の関係は続いたかもしれない。
だって、彼女は生きているし、記憶を思い出したんです。
誰が自分をこうしたのかわかっている。
だから、法で裁くこともできた(ただ、この場合は、自分も裁かれてしまうけれど)
でも最後は、ケイトとの新しい関係よりもブラウアーへの執念が勝った。
そして、自分が元々犯していた罪から、逃れようとした。
……たぶん、前者のほうが、圧倒的に大きいと思います。
だからといって、ケイトの存在が彼女に届かなかったわけでもないと思います。
むしろ届いていたからこそ、最後の言葉がある。
「ごめんね、ケイト」は本心だったと思う
爆発物を持ったスザンヌを、ケイトは止めようとします。
でも止められない。
スザンヌが最後にケイトへ向けるのが「ごめんね、ケイト」という謝罪。
この「ごめんね」には、いろいろな意味が入っていると思います。
記憶が戻ったことを黙っていてごめん。
心配してくれたのにごめん。
助けてくれたのにごめん。
止めようとしてくれているのに、それでも私はやる。
何かひとつだけではない。
でも少なくとも、ケイトへの気持ちは本物だったと思います。
全部利用していただけなら、最後にわざわざ謝る必要もない。
ケイトと過ごした時間を何とも思っていなかったわけではない。
それでもブラウアーへの執念を捨てられなかった。
そこが余計に悲しいです。
ケイトにとっても「解決」ではなかった
爆発によってスザンヌとブラウアーは死亡。
ケイトは目の前で止めようとしましたが、間に合いませんでした。
これはかなりやりきれなかったと思います。
単に「信じた相手に騙された」ではない。
自分がずっとそばにいて、友達になれそうなほど近づいた人が、最後には自分で死を選んだ。
しかもスザンヌはケイトを拒絶していたわけではない。
そこまで分かっているから「もっと何かできなかったのか」が残りそうです。
最後、トニーはそんなケイトを気にします。
でもギブスは無理に慰めに行かない。
誰かに慰められたところで、自分自身が失敗したと感じている気持ちは簡単には消えない。
だから無理やり踏み込まず、ただ自分の家のドアを開けておく。
今回のギブスについては、派手な捜査よりこっちの方が印象的でした。
一人にしておく。でも、来たければ入れる。
何も言わずに用意する距離感が、ケイトへの気遣いになっていました。
まとめ|記憶を取り戻しても、過去には戻れない
『NCIS』シーズン1第10話「埋められた女」は、生き埋めから脱出した記憶喪失の女性をめぐる事件でした。
スザンヌの記憶は少しずつ戻っていきます。
それ自体は回復です。
でも記憶を取り戻したからといって、何もなかった頃の生活へ戻れるわけではない。
取り戻した過去の中には、自分を殺そうとした男への憎しみもありました。
一方で、記憶を失ってから出会ったケイトとの関係も本物だったと思います。
だから最後の「ごめんね、ケイト」が悲しい。
新しくできた関係が彼女を少しは引き止めていたのかもしれない。
それでも最後は、過去への執念の方が勝ってしまった。
事件の真相には辿り着いたのに、誰も救われきらない。
今回の「回復」という言葉は、ちょっと怖いです。
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