『MILGRAM -ミルグラム-』囚人番号005番、桐崎獅童の第三審。
第一審・第二審では、臓器移植に関わる医師であることや、家族を失ったらしいこと、自分自身へ強い罪悪感を抱いていることが描かれてきたシドウ。
第三審では、その過去がかなり具体的に明かされます。
さらにMILGRAM内では、以前から危険性が示唆されていたアマネとの対立が最悪の形で決着し、シドウ自身が死亡します。
シドウが実際に犯した殺人とは何だったのか。
なぜ臓器移植に関わってきた自分自身を、あれほどまでに否定していたのか。
そして、最後まで他人を救おうとしたシドウが、なぜ自分自身だけは救おうとしなかったのか。
これまでの通達やMVも振り返りながら考えていきます。
シドウ第三審 基本情報
- 囚人番号:005
- 囚人:シドウ/桐崎獅童(CV:仲村宗悟)
- 審査:第三審
- 第三審公開日:2025年11月19日
アマネによる襲撃は以前から示されていた
第三審では、アマネによって刺されたシドウの最期が描かれます。
しかし、この出来事は突然発生したものではありません。
第二審終了後から危険性は示唆されていた
第二審の通達では、アマネとシドウの関係について、今後何らかの衝突が起こる可能性が示されていました。
シドウはMILGRAM内で負傷した囚人たちの治療を続けています。
一方、アマネにとって医療行為は自身の教義と相容れないものです。
そのため、治療を続けるシドウと、教義を守ろうとするアマネの対立は、この時点ですでに危険な状態へ向かっていました。
第三審開始通達ではシドウの襲撃が明確になる
第三審開始通達では、その懸念が現実になったことがより明確に示されます。
つまり第三審のシドウは、アマネに狙われる可能性があるという段階ではなく、すでにアマネによる襲撃が起きた状態から始まっています。
本編で描かれるのは、その出来事の詳細とシドウの最期です。
アマネによって殺されるシドウ
第三審は、監視カメラのような視点から始まります。
シドウが部屋から出て廊下を歩いていると、誰かに名前を呼ばれます。
走ってきたのはアマネ。
そのまま、シドウを刃物で刺します。
アマネは「神の代行」としてシドウを裁く
アマネは、幾度の警告にもかかわらずシドウが神を冒涜し続けたとして、自分が神の代行として裁きを下すという趣旨の言葉を口にします。
シドウがMILGRAM内で続けてきたのは、負傷した囚人への治療です。
しかしアマネの教義では、その行為そのものが許されない。
アマネにとってシドウへの攻撃は、単なる個人的な憎しみではなく、自分の教義に基づいた「裁き」になっています。
シドウは抵抗しない
一方、刺されたシドウは抵抗しません。
なぜ抵抗しないのか尋ねられても、自分にはこの終わり方が似合っている、自分自身も納得しているという態度を取ります。
第一審から続いてきた、シドウの強い自己否定がここにも表れています。
シドウにとって、自分が殺されることは理不尽な出来事ではない。
むしろ、自分が受けるべき罰の一つとして受け入れているように見えます。
最後までアマネを救おうとする
自分が刺されているにもかかわらず、シドウはアマネを責めません。
頭を撫で、君はやり直せる。周囲を頼りなさい。自分で最後にしなさい。という方向の言葉を伝えます。
自分は救わなくても、アマネは救おうとする
ここがシドウらしい部分です。
自分自身については、もう救われる必要がないと思っている。
しかしアマネについては違う。
まだ子どもであり、周囲を頼り、やり直すことができる人間として見ています。
自分の死を受け入れることと、アマネがこの先も殺人を続けることを認めることは別です。
そのためシドウは、自分の命を守ろうとはしなくても、最後までアマネの未来を守ろうとします。
「私は、あなたがずっと嫌いです」
アマネは最後まで、シドウを受け入れません。
それでもシドウは怒ることなく、その言葉を受け止めます。
アマネが刃物を残したまま去ったあと、シドウは子どもが好きだという趣旨の言葉を口にし、誰かに「会いたい」と呟きます。
そして、そのまま事切れました。
周囲には治療器具が散らばっています。
MILGRAMでもずっと他人を治療してきたシドウは、最後まで医療のそばにいながら、自分自身だけは救おうとしませんでした。
第三審資料で明らかになったシドウの過去
第三審資料では、シドウの家族と、彼が殺人へ至った経緯がかなり具体的に明かされます。
1992年生まれ、移植外科のスペシャリスト
シドウは1992年生まれ。
24歳の時、10年間交際していた幼馴染の女性と結婚し、二人の子どもを授かりました。
医師としての専門は移植外科。
臓器移植のスペシャリストであり、脳死となった患者の遺族へ臓器提供を依頼する立場でもありました。
遺族へ臓器提供の話をすることに、何も感じていなかったわけではありません。
それでも、一人の提供者から得られる臓器によって、多くの難病患者を救うことができる。
シドウは、その医療を必要なものだと信じていたようです。
家族が交通事故に遭う
ある夜、タクシーと大型トラックの衝突事故が発生します。
タクシーに乗っていたのは、シドウの妻と二人の子どもでした。
家族は、シドウが忘れた着替えを届けるためにタクシーを利用していたようです。
事故そのものはシドウが起こしたものではありません。
しかし本人からすれば、自分が忘れ物をしなければ家族はそのタクシーに乗らなかったという後悔につながった可能性があります。
シドウが担当したのはトラック運転手
事故の被害者たちが病院へ搬送されます。
しかしシドウが最初に担当したのは、自分の家族ではありませんでした。
処置を任されたのは、大型トラックの運転手です。
そこでシドウは、家族の治療へ加わるため、故意だと悟られないように運転手の命を静かに終わらせます。
これが、第三審資料で明らかになったシドウの直接的な殺人です。
患者を救うことを仕事にしてきた医師が、自分の家族を救うため、一人の患者を意図的に死なせた。
ここには、医師としてのシドウと、家族を救いたい一人の人間としてのシドウが完全に衝突しています。
妻と次男を失い、長男は脳死に
その後、シドウが家族の処置へ加わることは許されました。
しかし、妻と次男はほどなく死亡します。
残された長男へ懸命な処置を続けるものの、長男も脳死と判定されました。
ここでシドウは、それまで自分が何度も向き合ってきた状況の「反対側」に立つことになります。
遺族になった瞬間、世界が変わった
これまでのシドウは、脳死者の遺族へ臓器提供をお願いする側でした。
それが多くの患者を救うために必要なことだと信じていた。
しかし、自分の息子が脳死となった瞬間、その考えを受け入れられなくなります。
他人には受け入れてもらおうとしてきた。
それなのに、自分自身が同じ立場になるとできない。
その矛盾を、シドウ自身が最も強く理解していました。
そして、道理が通っていない。矛盾している。醜い。と、自分自身へ強烈な嫌悪を向けます。
長男の臓器提供意思表示カードを破る
長男の荷物の中には、臓器提供意思表示カードが入っていました。
しかも、それはシドウ自身が家族に持つよう勧めていたものです。
しかしシドウは、そのカードを破り捨てます。
第二審の白いカードや破られた紙はこれだった?
第二審「トリアージ」でも、シドウが紙を破るような描写がありました。
また、白いカードを思わせるものも登場しています。
第三審資料を踏まえると、これらは長男の臓器提供意思表示カードを示していた可能性があります。
第一審・第二審では意味の分からなかったモチーフが、第三審でようやくつながった形です。
「救えたかもしれない命」への道を閉ざした
臓器提供意思表示カードがあるからといって、必ず臓器提供が行われるわけではありません。
実際の提供には医学的な条件や遺族の判断も関わります。
そのため、シドウがカードを破ったことで、複数の人間が確実に死亡したとまでは言えません。
ただし、本人の提供意思が示されたカードは、遺族が判断する際にも大きな意味を持ちます。
長男本人が臓器提供の意思を示していた可能性があり、その臓器によって救われた患者がいた可能性もある。
シドウは、その可能性を自分自身の感情によって閉ざしました。
だから本人にとっては、救えたかもしれない命を救わなかったという罪として残ったのではないでしょうか。
シドウが背負っている複数の罪
第三審資料を見ると、シドウが自分自身を責め続けてきた理由は一つではありません。
トラック運転手を直接殺した
家族の治療へ移るため、一人の患者の命を意図的に絶った。
これはシドウ自身が直接行った殺人です。
家族を事故へ向かわせたと思っている可能性
家族は、シドウの忘れ物を届けるためにタクシーへ乗っていました。
実際に事故を起こした責任がシドウにあるわけではありません。
それでも本人からすれば、自分が忘れ物をしなければ事故に遭わなかったという思いが残っていても不思議ではありません。
長男が救えたかもしれない命を救わなかった
そして、長男の臓器提供意思表示カードを破ったこと。
実際に何人へ臓器提供できたのか、その患者たちがどうなったのかは分かりません。
しかしシドウ自身は、それまで臓器提供によって多くの命を救ってきた医師です。
その可能性を誰より理解していたはずです。
だからこそ、自分が感情によって提供の可能性を閉ざしたことも、大きな罪として受け止めていたのではないでしょうか。
シドウは臓器移植そのものを否定したのか
ここは分けて考えたいところです。
シドウは、自分が臓器移植に関わってきたことすべてを「間違いだった」と考えたわけではないと思います。
実際に、その医療によって救われた患者はいた。
シドウ自身も、そのために必要な仕事だと信じていました。
彼が耐えられなかったのは、他人には受け入れることを求めてきたのに、自分自身は同じ決断をできなかったこと。
医師として信じていた倫理。
父親として息子を手放したくない感情。
どちらもシドウ自身の本心です。
しかし、その二つを両立できなかった自分自身を、シドウは許せなかったのだと思います。
過去を知るとアマネへの態度も見え方が変わる
第三審資料まで読むと、冒頭でシドウが抵抗しなかった理由もさらに分かりやすくなります。
シドウは、自分をすでに「罰を受けるべき人間」だと考えている。
だからアマネに殺されること自体には抵抗しない。
しかし、だからといってアマネ自身が殺人者として生き続けることを望んでいるわけではありません。
「俺で最後にしなさい」
シドウは、自分の死を受け入れながら、アマネには同じ行為を繰り返さないよう求めます。
これは、自分の罪を罰することと、目の前の子どもの未来を救うことを完全に別の問題として考えているからではないでしょうか。
自分はもう救わなくていい。
しかしアマネは違う。
最後まで、シドウはその考えを崩しませんでした。
「子ども、好きなんですけどね」「会いたいな」
第三審資料によって、シドウには二人の子どもがいたことが明らかになりました。
そのため、死の直前にアマネの頭を撫でながら子どもについて口にし、「会いたい」と呟く場面も意味が変わります。
目の前にいるアマネという子どもを見ながら、自分の子どもたちを思い出した可能性があります。
妻。
次男。
そして脳死となった長男。
シドウが最後に会いたいと願った相手は、自分が失った家族だったのかもしれません。
直後の情報をMILGRAMへ保存
三枚目の資料では、一連の出来事の直後の情報をMILGRAMへ保存したことが示されます。
この「情報をMILGRAMへ保存」という表現は、第三審資料で複数の囚人に共通して登場しています。
シドウは1992年生まれ。
現時点までに判明した生年を並べると、
- シドウ:1992年
- ハルカ:1997年
- フータ:1999年
- ムウ:2001年
- ユノ:2004年
となります。
MILGRAMの囚人は保存された情報から構築されている?
MILGRAM内では囚人たちの年齢が基本的に変わりません。
一方、現実世界での生年を見ると、それぞれが同じ時代の同年代だったとは考えにくい状態になっています。
そこへ繰り返される「情報を保存」という表現。
このことから、事件後のある時点で人格・記憶・思考などの情報を保存し、それをもとにMILGRAM内の囚人を構築している
可能性が強まっていきます。
まだ確定ではありませんが、第三審資料が増えるほど、この仮説を考えたくなる材料が増えています。
第三審のシドウをどう見るか
第三審で明らかになったシドウの罪は単純ではありません。
家族の治療へ加わるため、一人の患者を殺した。
これは明確にシドウ自身が選んだ行為です。
一方で妻と次男を失い、長男も脳死となった。
そして初めて、自分がこれまで臓器提供を求めてきた遺族と同じ立場に立った。
その時、自分が信じてきた理屈を貫くことができなかった。
シドウが最も許せなかったのは、誰かではなく、自分自身だったのではないでしょうか。
だからこそMILGRAMでも、自分の死を受け入れる。
それでも最後まで、他人には生きてほしいと願う。
第二審の時点から危険性が示されていたアマネとの関係も、最終的にはシドウ自身の死へつながりました。
しかし、その最後の瞬間まで、シドウがアマネへ向けたのは怒りではありません。
自分自身だけを治療の対象から外しながら、最後まで他人を救おうとした医師。
第三審のシドウは、そんな人物として描かれていたように感じます。
まとめ|最後まで他人を救い、自分だけを救わなかったシドウ
第三審で、シドウの過去はかなり具体的になりました。
移植外科医として多くの命を救ってきた。
脳死者の遺族へ臓器提供を求めてきた。
それが必要な医療だと信じていた。
しかし自分の家族が事故に遭った時、シドウは家族の治療へ加わるため、一人の患者を意図的に死なせます。
妻と次男を失い、長男も脳死となった。
そして、自分自身が遺族になった瞬間、それまで他人へ求めてきた決断をすることができませんでした。
長男の臓器提供意思表示カードを破り、救えたかもしれない命へ臓器が渡る可能性も閉ざした。
シドウは、その矛盾を誰より自覚していました。
第二審の時点で、アマネとの衝突は予告されていました。
第三審開始通達でその襲撃が明確になり、本編ではシドウの最期が描かれる。
それでもシドウは、アマネを責めません。
自分にはこの終わり方が似合っていると受け入れながら、
君はやり直せる。周囲を頼りなさい。俺で最後にしなさい。と伝える。
自分自身には与えられなかった救いを、最後まで他人には与えようとする。
シドウは最後まで、誰かを救おうとする医師でした。
ただ一人。
自分自身だけを除いて。
関連記事
- シドウ|キャラクター紹介・考察
- シドウ第一審「スローダウン」感想・考察
- シドウ第二審「トリアージ」感想・考察
- 第三審開始通達 感想・考察
- MILGRAM 世界観・システムまとめ
- MILGRAM キャラクター一覧
- MILGRAM 全MV・動画一覧
更新
2025年11月19日公開のシドウ第三審まで視聴した時点の感想・考察です。
第三審の後続囚人の内容は、本文の考察には使用していません。
