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MILGRAM フータ第三審「天晴行進曲」感想・考察|少女の死と破れた正義の旗

『MILGRAM -ミルグラム-』囚人番号003番、椋原楓汰の第三審「天晴行進曲」。

公式では2025年8月20日に第三審MVとして公開されました。
第三審シングルには「天晴行進曲」のほか、Voice Drama「火宅之境」などが収録されています。

第一審ではゲームのような世界で敵を倒すフータ、第二審では逆に自分自身が裁かれ、追い詰められていくフータの姿が描かれてきました。
そして第三審では、これまで「ネット上の私刑」として示されていたフータの事件について、かなり具体的な情報が明かされます。

同時に気になるのが、少女の死を知ったあと、フータは本当に自分の行為を反省したのか。
アマネの「粛清マーチ」を思わせる要素、破れた旗、「AN UNDEAD HERO」と書かれた雑誌。

今回の「天晴行進曲」では、フータが過去に何をしたのかだけではなく、第三審の現在、何を正しいと信じているのかまで描かれているように感じました。

「天晴行進曲」基本情報

  • 囚人番号:003
  • 囚人:フータ(CV:ランズベリー・アーサー)
  • 審査:第三審
  • 楽曲:天晴行進曲
  • MV公開日:2025年8月20日
  • 第三審シングル発売日:2025年8月20日
  • カバー曲:ルーキー -フータ Cover-
  • Voice Drama:火宅之境

女子中学生が鍵アカウントに

MVでは、一人の女子中学生がSNS上で激しく攻撃されていきます。

少女は途中でアカウントを非公開、いわゆる鍵アカウントへ変更します。
しかし、それで炎上が収まることはありません。
むしろ周囲はさらにヒートアップしていく。

少女本人の投稿だけではなく、周囲の人間による返信や、写真に映り込んだ情報なども調べられていったように見えます。
やがて中学校が特定され、さらに少女の目に映っていた景色や生活圏から、住所まで突き止められていく。
ネット上で始まった攻撃が、少しずつ現実世界へ近付いていきます。

満月を背に笑うフータ

その中で、フータは満月を背に立っています。

手で顔を隠し、少し俯きながら笑う。
そして最後には、腹の底から笑うように大きく笑っています。

この段階では、少女が炎上を止めようとしている一方、フータはそれを見て楽しんでいるように見えます。

自分たちは悪い人間を裁いている。
炎上が広がるほど、自分たちの正しさが証明されていく。

そんな高揚感があるようにも感じました。

葬儀を目撃するフータ

その後、少女の家と思われる場所に場面が移ります。

玄関には弔事を示すものがあり、「故」の文字が確認できます。

家の前には母親や妹と思われる人物。
さらに、泣いている同年代の少女もフータの横を通り過ぎていきます。

友人だったのでしょうか。

そして、それまで笑っていたフータの表情が一変します。
口を開けたまま立ち尽くし、驚いたような、気まずそうな、現実を理解できていないような顔をしています。
この場面は「アンダーカバー」に登場していた、囚人の過去らしき映像とも一致します。

以前からフータの過去ではないかと思っていましたが、第三審でほぼ答え合わせされた形です。

割れたスマートフォンを置いていく

葬儀の場面のあと、フータは割れたスマートフォンを地面に置いたまま、その場を離れていきます。

スマートフォンは、フータにとってSNSそのものでもあります。

炎上。
同志とのつながり。
誰かを裁くための道具。

そのスマートフォンを置いていく姿だけを見ると、これまでの自分から離れようとしているようにも見えます。

しかし、その後に続く映像を見ると、単純に「反省してSNSを捨てた」という場面ではなさそうです。

夕焼けの中に落ちている破れた旗

フータが辿り着いたのは、夕焼けに染まった場所。

そこには、いくつもの旗が落ちています。
どの旗も破れ、大きな穴が開いている。
柄の部分には血のようなものが付着しているようにも見えます。

旗は、思想や主義、集団、信念を象徴するものとして使われることがあります。

今回のフータの場合は、「悪い人間を裁くことは正しい」という、彼と同志たちが共有していた正義を表しているようにも見えました。

しかし、その旗はすでにボロボロです。
少女の死によって、フータが掲げていた正義は一度破綻した。

それでもフータは、その旗を拾います。

旗を拾った瞬間、フータの目が変わる

旗を拾った直後、フータの目がぐるぐるとした形へ変わります。

この目は、アマネを思わせる表現です。

少女の死を見たあと、一度は自分の正義が壊れた。
それでも旗を捨てず、再び拾う。

第三審のフータは、正義から離れるのではなく、むしろもう一度そこへ戻ろうとしているように見えます。

「AN UNDEAD HERO」と書かれた雑誌

旗を掲げるフータの背後には、彼自身が表紙になっている雑誌のようなものが落ちています。

確認できる文字には、

  • AN UNDEAD HERO
  • BURN
  • No.003
  • 419yen
  • Mのロゴ

などがあります。

特に気になるのが、「AN UNDEAD HERO」という言葉です。
「死なない英雄」「死者となった英雄」など、いくつかの読み方ができます。

少女の死を見た時点で、本来なら、フータの中にあった「自分は正義を行う側だ」という英雄像も壊れるはずでした。
しかし、それでも死なない。
一度否定されてもなお残り続ける、フータ自身の「正義のヒーロー」としての自己像。

そんな意味にも見えます。

破れた旗の穴に収まるフータ

さらに印象的なのが、画面全体の構図です。

フータが掲げている旗には、中央に大きな穴が開いています。
そして、その穴の奥にある雑誌の表紙のフータが、ちょうど旗の中央に収まるように配置されています。

旗そのものの影も、雑誌の上へ落ちています。
偶然というより、かなり意図的な構図に見えます。
正義を象徴する旗の中央は、すでに破れ、何もない。
その穴を埋めているのが、「英雄としてのフータ」。

つまりフータにとっての正義は、いつの間にか、善いことをするためのものではなく、正義を行う自分でありたい悪を裁く英雄でありたいという自己像へ変化していたのかもしれません。

壊れた旗の中心に、死なない英雄だけが残っている。
「AN UNDEAD HERO」という言葉ともよく繋がります。

「BURN」は炎上そのもの?

雑誌には「BURN」という文字もあります。

燃える。
燃やす。

今回のフータの場合、そのままSNS上の「炎上」と重なります。
悪を見つけ、火をつけ、大きく燃やす。

第三審で明らかになるフータの行動を、そのまま表した言葉のようにも見えます。

アマネの「粛清マーチ」と重なる要素

今回のフータで無視できないのが、アマネとの関係です。

フータは「天晴行進曲」。
アマネは「粛清マーチ」。

どちらも行進曲を思わせるタイトルになっています。
さらに「天晴行進曲」には、アマネの「粛清マーチ」に登場した四つの教義を思わせる要素が組み込まれています。
アマネは、与えられた規律を絶対的な正しさとして信じています。

一方のフータも、悪いことをした人間は裁かれて当然という独自の正義を持っていました。
二人はまったく違う環境で生きてきましたが、自分が信じる正しさによって他者を裁くという構造はよく似ています。
しかし、フータには第一審から続く「事変上等」の姿勢も残っています。

アマネの考え方に完全に塗り替えられたというより、もともとフータが持っていた正義感の上に、アマネの思想が重なっているように見えます。

第三審資料で明らかになったフータの過去

第三審資料では、フータの事件についてかなり具体的な情報が明かされます。

1999年生まれ、大阪出身の大学生

フータは1999年生まれ。
大阪出身で、東京の大学に通う一人暮らしの大学生でした。

暇を持て余していた彼の趣味は、SNSで炎上を見つけること。
この時点ですでに、炎上は偶然目に入るものではなく、フータ自身が積極的に探す娯楽になっていたようです。

私刑によって満たされていた正義感

フータは過去にも、不適切な行動をした人間をSNS上で発見しています。

その情報を拡散し、個人情報を特定。
さらに関係する企業へ抗議文を送り、最終的には謝罪文を出させるところまで進んだことがありました。
資料では、この一連の行為を明確に「私刑」としています。

そしてフータは、その行動を周囲の「同志」たちから賞賛されます。
ここで「仲間」ではなく「同志」と表現されているのが印象的です。
友人としてつながっているのではなく、同じ思想、同じ正義を共有する集団。
その人々から認められることで、フータの正義感は満たされていきます。

やがて彼自身も、自分がしていることは善い行いだと信じるようになっていったようです。

女子中学生の投稿を「炎上のタネ」と判断する

ある日、フータが見つけたのが、今回の女子中学生による投稿でした。

内容は、未会計の商品である帽子を被った状態で写真を撮影したもの。
もちろん正しい行為ではありません。
しかしフータは、それを単に「良くないこと」として見たのではなく、これは炎上のタネになると判断します。

さらに、少女が非常に美しかったことも、大きく燃える要素として理解していたようです。
フータは、自分と同じように炎上へ集まる人間が、何に反応するのかをよく知っていた。
つまり、怒りに任せて偶発的に炎上へ参加したわけではありません。

「この人間なら燃える」と判断し、自ら燃やしにいった。

ここは今回、大きなポイントだと思います。

フータ自身が火を起こしていた

資料では、フータがすぐに「火起こし」を始めたことも示されています。

炎上はあっという間に広がっていく。
つまり、女子中学生の投稿が自然に炎上した、そこへフータも参加した、という流れではありません。
女子中学生の投稿をフータが見つけ、フータ自身が意図的に火をつけた。

MVで描かれていた大炎上の始まりに、フータ自身がいたことになります。

少女が近所に住んでいると分かる

情報収集を続けている途中、フータは少女が自分の近所に住んでいることを知ります。
そこからさらに外へ出て、現実世界でも個人情報を探していく。

ネット上の投稿や人間関係を調べるだけではなく、自分自身が現地へ足を運んでいる。
私刑は、SNS上だけでは終わりませんでした。

少女の実際の生活圏へ、フータ自身が踏み込んでいきます。

火消しをする少女を見て嗤っていた

女子中学生は、炎上を止めようとします。
しかし、すでに炎は広がりすぎていました。
そして資料では、そんな少女を見たフータが嗤っていたことが示されます。

ここで、MVの満月を背に笑うフータの意味がかなり明確になります。
初見では、炎上そのものに高揚している場面に見えました。
資料まで読むと、実際には、必死に火を消そうとしている少女がどうにもできずにいる状況を見て笑っていたことになります。

この時点では、少女が一人の人間であることよりも、ネット上の「裁かれる対象」として見ていたのかもしれません。

少女の家で葬儀が行われていた

ある日、フータが少女の家の前を通ると、そこで葬儀が行われていました。

その景色が目に入った瞬間、フータは下を向き、その場を引き返します。

冷や汗。
身体の震え。
速くなる心臓の動き。

少女の死を知って、何も感じていなかったわけではありません。
しかし、この反応は、少女を死なせてしまったことへの深い悲しみというより、自分が取り返しのつかないことをしてしまったという恐怖に近いようにも見えます。

そしてその間も、フータのスマートフォンはSNSの通知を鳴らし続けています。

ネット上では、まだ炎上が続いている。
しかし現実では、その対象だった少女は亡くなっている。
この落差が非常に印象的です。
なお、資料では少女の具体的な死因までは断定できません。

そのため、現時点では炎上のあと少女が死亡したというところまでに留めておきます。

直後のフータの情報をMILGRAMへ保存

三枚目の資料では、事件直後のフータの情報をMILGRAMへ保存したことが示されます。

この「情報をMILGRAMへ保存」という表現は、ハルカ、ユノの第三審資料でも登場しています。
そのため、MILGRAMへいる囚人たちは、現実世界の肉体そのものではなく、ある時点の人格や記憶、思想などを保存された存在なのではないかという可能性がさらに強くなります。

この部分については、世界観・システムまとめの方でも整理していきたいと思います。

資料を踏まえて「天晴行進曲」をもう一度見る

ここまで資料を読むと、MV前半で見えていたものの意味もかなり変わってきます。

フータは本当に反省したのか

少女の葬儀を見たフータは、明らかに動揺しています。
冷や汗をかき、震え、心拍数も上がっている。

だから、少女の死に何も感じていないわけではありません。

しかし、結果にショックを受けることと自分の思想そのものを反省することは別です。
自分の行為が一人の人間の死につながった。

そこまでやるつもりではなかった。
自分もMILGRAMで裁かれた。
そうした後悔や恐怖はある。
それでも、第三審のフータは壊れた旗を捨てません。
再び拾い上げ、掲げます。

そのため少なくとも第三審時点では「やりすぎた」とは思っていても、「悪人を裁くという自分の考えそのものが間違っていた」とまでは考えていないように見えます。

アマネはフータを変えたのか

ここでアマネとの関係が重要になります。

アマネの宗教観には、与えられた正しさを信じ、その道を進み続けるという強さがあります。
その考え方が、フータに新しい思想を与えたというより、フータが元々持っていた「自分は正しい」という考えを補強したと考える方が自然に感じます。

少女の死によって、一度は自分の正義が壊れた。
そのまま自分の間違いを受け入れれば、それまでの自分自身も否定することになります。
そこで、アマネの「信じた正しさを貫く」という考え方が入った。
結果、フータは正義を捨てるのではなく、自分が信じてきた道をもう一度選び直した。

そう考えると、破れた旗を再び拾う場面ともつながります。

「事変上等」はまだ残っている

そして、フータには第一審から続く「事変上等」の精神も残っています。

アマネの教義を思わせる要素が入っていても、フータ自身の核が完全に消えたわけではありません。
むしろ、自分の正義を曲げない。間違っていると言われても戦う。そんな部分が、アマネの思想によって強化されたようにも見えます。

だから第三審のフータは、反省して縮こまった姿ではありません。
一度倒れたあと、再び旗を掲げて立っています。

「AN UNDEAD HERO」は死ななかった英雄像なのか

ここまで踏まえると、「AN UNDEAD HERO」という言葉もかなり意味深です。

少女の死を見た時点で、本来なら、正義のために戦っている自分、悪を倒すヒーローとしての自分という自己像は壊れるはずでした。

でも、その英雄は死ななかった。
一度崩れても、第三審で再び立ち上がる。
だからこそ「UNDEAD HERO」なのかもしれません。

さらに、そのフータの姿は破れた旗の穴の中に収まっています。
正義の旗そのものは壊れている。
しかし、その中央にはまだ「英雄としてのフータ」がいる。

フータが守ろうとしているのは正義そのものではなく、正義を行う自分自身なのではないか。
そんな疑問も残ります。

フータの罪はどこにあるのか

少女が未会計の商品を身につけて撮影したことは、褒められる行為ではありません。

しかし、その行為に対する罰として、

学校を特定される。
住所を特定される。
生活圏まで探られる。
大勢から攻撃される。

そこまでされていいはずもありません。

フータの私刑の危うさは、罪に対してどこまで罰を与えていいのか、その限界を誰も決めていないことにあります。
しかも、フータ自身は少女を直接殺したわけではありません。

最初に火をつけた人間。
拡散した人間。
個人情報を探した人間。
攻撃した人間。
見ていただけの人間。

大勢が関わったからこそ、一人ひとりは「自分一人の責任ではない」と思えてしまいます。
しかしフータは、その中でも炎上のタネを見つけ、意図的に火を起こした人物でした。

MILGRAMがこの出来事を「殺人」として扱っていること自体が、視聴者へ向けた問いなのかもしれません。

第一審のゲーム世界も見え方が変わる

第三審で現実の事件が明らかになったことで、第一審MVのゲーム世界も違って見えてきます。

第一審のフータは、敵を倒すヒーローのように描かれていました。
ネット上では、悪を見つけ、敵を倒しただけ。
しかしその向こうには、本当に生活している人間がいた。

家族がいる。
友人がいる。
学校へ通っている。
痛みも恐怖もある。

フータが葬儀を目撃した時、初めて「敵」ではなく、一人の人間を攻撃していたことが現実として目の前に現れたのかもしれません。

第三審のフータを赦すか

第三審までを見ると、フータが自分の行為について何も感じていないとは思いません。

少女の死には明らかに動揺しています。
自分自身もMILGRAMで裁かれ、傷つき、追い詰められました。
しかし、第三審で見えるのは、完全に自分の正義を捨てたフータではありません。

壊れた旗をもう一度拾い、自分の信じるものを掲げています。

そのため現時点では、結果については後悔している。しかし、自分が信じていた正義そのものを否定したわけではない。という状態に見えます。
第三審でフータをどう判定するかを考えるなら、単純に「反省したか」ではなく、何について後悔しているのか。そして、今でも何を正しいと思っているのか。そこを分けて見る必要がありそうです。

まとめ|フータは壊れた正義をもう一度掲げる

第三審「天晴行進曲」では、フータの事件がかなり具体的に明かされました。

炎上を探すことを趣味とし、過去の私刑によって「同志」たちから賞賛され、自分の行動を善いものだと信じるようになったフータ。
女子中学生の投稿を「燃える」と判断し、自ら火を起こす。
学校や住所まで特定され、少女が必死に火消しを試みる姿を見て、フータは笑っていました。
しかし、その後、少女の家で葬儀を目撃します。

そこで初めて、ネット上の「敵」ではなく、一人の人間が本当に死んだという現実を突きつけられます。

フータは動揺した。
怖がった。
それでも、第三審で彼が選んだのは、壊れた旗を捨てることではありませんでした。

アマネの教義を思わせる考え方を取り込みながら、再び旗を拾い、自分の正義を掲げる。
そして、その破れた旗の中央には「AN UNDEAD HERO」としてのフータ自身がいます。

壊れたのは正義だったのか。
それとも、自分が正義の英雄だという幻想だったのか。
少なくとも第三審のフータは、そのどちらも完全には捨てられていないように見えました。

「天晴行進曲」は、罪を悔いるフータの歌というより、一度壊れた正義を、それでももう一度掲げようとするフータの歌なのかもしれません。

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更新

2025年8月20日公開のフータ第三審MV「天晴行進曲」まで視聴した時点の感想・考察です。
公式では第三審シングル「天晴行進曲」として公開され、Voice Drama「火宅之境」などが収録されています。

第三審の後続囚人の内容は、本文の考察には使用していません。

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