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MILGRAM ミコト第三審「レクイエム」感想・考察|空白の二日間と12人の被害者

『MILGRAM -ミルグラム-』囚人番号009番、榧野尊の第三審「レクイエム」。

第三審では、ミコトがどのような生活を送り、いつ限界を迎え、その裏側で何が起きていたのかが明らかになりました。
大手広告代理店で働き、友人にも恵まれ、それまで大きな挫折を経験してこなかったミコト。
しかし社会人になった先で待っていたのは、戦場のような職場でした。

仕事量は自分の限界を超え、言われていることすら理解できなくなる。
それでも助けを求めることができず、周囲には曖昧に笑い、母親にも嘘を吐く。
そしてついにミコト本人が倒れていた二日間。

その間に、もう一人のミコトが12人の命を奪っていました。

第三審「レクイエム」について、MVと第三審資料から考えていきます。

ミコト第三審「レクイエム」基本情報

  • 囚人番号:009
  • 囚人:ミコト/榧野尊(CV:花江夏樹)
  • 審査:第三審
  • 楽曲:レクイエム
  • MV公開日:2026年7月15日
  • 第三審シングル発売日:2026年7月15日
  • カバー楽曲:キメラ -ミコト Cover-
  • Voice Drama:The One

第三審シングルには「レクイエム」のほか、「キメラ」のカバー、Voice Drama「The One」が収録されています。

いつも通り始まるミコトの日常

MVは、空とビルが並ぶ都会の風景から始まります。

時刻は6時35分。
スマートフォンのアラームが鳴り、ミコトが勢いよく手を伸ばして止めます。

その後も、自転車で坂を下る→信号を待つ→同僚らしい女性と非常階段で煙草を吸いながら笑う→電車に乗る→職場で仕事をするという流れを追います。

一見すれば、ごく普通の社会人の日常です。
しかし、その間へ何度も被害者資料が挟まれます。

次々と表示される被害者資料

最初に表示されるのは、中林大志という48歳の男性。

住所不定で、囚人番号009番の自宅近くにある高架下の簡易テントで生活していました。
深夜、異常を感じてテントから顔を出したところ、金属バットで頭部を強打されています。

その後も画面には、次々と別の被害者の資料が表示されます。

無職の男性。
フリーター。
会社員。
高校生。
ホストクラブ勤務。
ラウンジ勤務。
自営業。
警備員。
デザイン会社勤務。
年齢も性別も職業もばらばらです。

第三審資料では、最終的に二日間で12人が殺害されたことが明らかになりました。
特定の属性を持つ人々だけが狙われていたようには見えません。

助けようとした人まで殺されている

後半の被害者には、特に印象的な人物がいました。

犬の散歩中に襲われた女性。
犬の鳴き声を聞いて現場へ向かい、倒れている女性を見つけた警備員。
彼は通報しようとしたところを襲われています。

さらに、血まみれで座り込んでいる容疑者を負傷者だと誤認し、救急車を呼ぼうとした男性も殺害されています。
この二人は、最初から狙われていたわけではありません。

現場を発見し、だからこそ被害者を助けようとした。
なのに、その結果、殺された。

そのため、もう一人のミコトによる殺人を「ミコトへ害を与える人間だけを排除していた」と考えることは難しそうです。

少しずつ疲弊していくミコト

被害者資料が増えていく一方で、ミコトの日常にも変化が現れます。

序盤では自転車で坂を下りながら機嫌が良さそうだったミコト。

しかし次第に、ひどい寝不足→目の下のクマ→信号待ちをしているだけでも辛そうな表情→一人で非常階段へ行き、欄干のような場所へ突っ伏す姿→雨の中で泣いているようにも見える場面。

と、明らかに疲弊していきます。

「論外」と突き返される仕事

職場では、カラーの紙に大量の赤字や付箋が付けられています。
「論外」と書かれた付箋も見えます。
ミコトが制作したものなのでしょうか。

上司らしき人物に厳しく指摘され、紙を投げ捨てられる。
別の場面では何かが通ったのか、喜んでいる様子もあります。

しかし、一度仕事がうまくいった程度では回復できないほど、ミコトはすでに疲れ切っていたようです。

誰もいない電車と記憶の空白

MVでは、誰も乗っていない電車も登場します。

窓の外は光に覆われ、景色を見ることができません。

ミコトは座席で目を閉じています。

そこから目を覚ますと、今度は職場のデスク。

周囲には誰もおらず、ミコトだけが残っています。

単なる寝落ちにも見えますが、ミコトという人物を考えると、意識や記憶の切り替わりを示す場面のようにも感じます。

第三審資料で明らかになったミコトの過去

2000年、東京都渋谷区生まれ

ミコトは2000年、東京都渋谷区の一般的な中流家庭に生まれました。
友人も多く、場の空気や人との距離感を読むことに優れていたようです。

自然と周囲へ人が集まる。
大きな挫折も経験しないまま成長し、やがて大手広告代理店でデザイナーとして働くことになります。

同世代からは羨望の目を向けられ、ミコト自身も、これから人生はさらに華やかになっていくと信じていました。

職場は「戦場」だった

しかし、実際に入った職場は戦場のような劣悪な環境でした。

自分のキャパシティを超える仕事量。
何を言われているのか、その意味すら理解できなくなっていく。
それでもミコトは、曖昧に笑ってやり過ごします。
もともと空気を読むことが得意だったことが、ここでは逆に自分を苦しめたのかもしれません。

場を乱さない。
周囲へ合わせる。
できないと言わない。
助けてと言わない。
母親にも本当の状況を話さず、嘘を吐く。

これまでミコトを支えてきた「周囲とうまくやる能力」が、限界を他人へ知らせることを難しくしてしまったように見えます。

ミコトが倒れていた二日間に起きたこと

やがてミコトは限界を迎えます。

第三審資料によると、ミコト本人は丸二日間、倒れていたようです。
しかし身体が動かなかったわけではありません。
深夜になると起き上がり、金属バットを持って外へ出る。
そして次々と人々を襲い、二日間で12人を殺害していました。

ミコト本人ではなく、もう一人のミコトが表へ出ていたと考えられます。

怒号、泣き声、そして「産声」

その時の声は、怒号とも、泣き声とも、そして、産声とも取れるものだったとされています。

この「産声」という表現は、とても重要に感じます。
もう一人は、以前から完全な人格として日常的に存在していたのではなく、ミコトが限界を迎えたこの二日間に、はっきりと形を持って生まれたのかもしれません。

ミコト本人が、怒れない。拒絶できない。助けてと言えない。
そうして内側へ溜め続けた感情としての、怒り。苦痛。悲しみ。拒絶。
それらをまとめて引き受ける存在が、ミコト自身が倒れた時に表へ出てきた。

だからその声は、怒っているようにも、泣いているようにも、新しく生まれた存在の声にも聞こえたのではないでしょうか。

もう一人は、ミコトのストレスを引き受けた?

第三審資料では、二日間の空白を経たミコト本人が、すでにどこか吹っ切れていたことも示されています。

これからはもっと自由にやっていこう。
そう考えられるようになっていた。

身体は重い。
仕事も大変だった。
状況そのものが良くなったわけではありません。

それなのに、心は以前より軽くなっている。
もしもう一人が、ミコト自身では処理できなくなった感情を引き受けていたとすれば、この変化にも説明がつきます。

ミコトが抱え続けてきたストレスを、もう一人が引き受けた。
そして、その感情を周囲への暴力として吐き出した。

ミコト本人からすると、理由は分からない。
ただ、目覚めた時には以前よりも心が軽くなっていた。

その裏側で12人が亡くなっていたことを、本人は知りません。

二日間だけだったことが意外だった

第一審・第二審までを見ると、もう一人のミコトとは、もっと長い期間にわたって頻繁に人格交代しながら生活していたようにも見えました。

しかし第三審で示された大規模な殺人は、わずか二日間に集中しています。
これは個人的にとても意外でした。
日常生活を二人で長く分担していたというより、ミコトが完全に限界を迎えた時だけ現れた、緊急避難のような存在だった可能性も考えられます。

もちろん、第三審資料だけでは人格が完全にこの二日間だけ存在したとまでは断定できません。
ただ、少なくとも12人の殺害が短期間に集中していたことは大きな情報です。

「ぼくを忘れて」は誰の言葉?

第三審「レクイエム」は、映像の内容とは対照的に、穏やかで少しポップにも感じる曲調です。

歌詞には、喪失や別れを思わせる言葉が多く登場します。
また、自分が自分であることを願うような内容も繰り返されます。
その中で印象的なのが「忘れて」「サヨナラ」と誰かへ別れを告げるような流れです。

この言葉を歌っているのは、もう一人のミコトなのではないでしょうか。
ミコト本人には、二日間に何があったのか分かっていない。
それでも何かを失ったような感覚だけが残っている。

一方、もう一人はミコトが抱えきれなかったものを引き受け、役割を終えようとしている。
そんな二人の別れにも聞こえました。

第二審終了後にもう一人は消えた?

ただし、もう一人がいつ消えたのかは分かりません。
第三審では喪失感が強く描かれているため、第二審終了後にはすでに表へ出なくなっていた可能性も考えられます。

一方で、楽曲の最後では、歌い方や声質がそれまでのミコトよりも、荒々しいもう一人のミコトへ近付いているように聞こえます。

そのため、完全に消滅したと断定するのも難しいところです。

もう一人そのものがいなくなったのではなく、これまで担ってきた役割を終えた。
あるいはミコトとの境界が以前とは違うものになった。
そのような変化を描いている可能性もありそうです。

「自分でいてくれ」という願い

第三審の歌詞には、自分自身でいてほしいと願うような内容があります。

これも、もう一人からミコトへ向けられた言葉として考えると印象が変わります。

これまでは、
ミコトが怒れないから代わりに怒る。
ミコトが拒絶できないから代わりに拒絶する。
ミコトが耐えられなくなったから代わりに表へ出る。
そんな役割をもう一人が引き受けていたのかもしれません。

しかし事件後、ミコト本人は「これからは自由にやっていこう」と思えるようになります。
ようやく、自分自身で自分の人生を選ぼうとしている。

だからもう一人も、今度は自分自身として生きてほしいと願っているのかもしれません。

二日ぶりに目を覚ますミコト

MV終盤。

目を閉じていたミコトは、昼過ぎに勢いよく飛び起きます。
しばらくして時間を確認し、異常に気付きます。

スマートフォンには大量の通知。
そして最後に、チーフから送られてきたメッセージ。
明日から来なくていい。

ミコトは仕事を失いました。
しかし本人からすれば、二日間ずっと眠っていただけです。

その間に自分の身体が12人を殺していたことなど知りません。

曇り空と新しい一歩

カーテンが揺れます。

外には曇り空。
ミコトは鏡を見ながらピアスを付け、身支度をします。

仕事を失った。
それでも、ここからもっと自由に生きよう。
新しい一歩を踏み出そう。

そんな状態だったようです。

そして玄関へ向かいます。

扉を開く。
外から光が差し込む。

それなのに、そこに立っていたのは、二人の警察官でした。

やり直そうとした瞬間に警察が来る

ミコト本人の視点だけで考えると、あまりにも残酷な流れです。

毎日限界まで働いた。
二日間眠った。
起きたら仕事を失っていた。

なぜか心は少し軽くなっていた。
それなら、もう仕事に縛られず自由に生きていこう。

そう思って玄関を開けた。
そこに警察がいる。

ミコト本人にとっては、人生をやり直そうとした瞬間です。
しかし現実では、その空白の二日間に12人もの人が亡くなっています。

新しい人生へ踏み出そうとした瞬間が、自分の知らない罪と向き合わされる瞬間になってしまいました。

ミコトは自分が何をしたのか理解していなかった?

第三審まで見る限り、ミコト本人は事件の全容を理解していなかった可能性が高そうです。

二日間の記憶がない。
殺人を行った自覚もない。
目覚めた後には、むしろ気持ちが軽くなっている。

その状態で警察と対面する。
つまりミコトにとっては「自分が12人を殺した」という認識そのものが存在していません。

MILGRAMにとっても、これは扱いの難しいケースだったのではないでしょうか。

誰を裁くのか

ミコトの身体によって、12人の人間が亡くなった。

この事実は変わりません。
被害者にはそれぞれ名前があり、生活がありました。
中には、事件現場を見つけて助けようとしたために殺された人もいます。

被害の重さを、人格が違うという理由だけで無視することはできません。

しかし一方で、ミコト本人が殺意を持って12人を殺したとも言い切れません。

本人には記憶がない。
意識を失っていた二日間、もう一人が行動していた。
そのもう一人も、ミコトが限界まで追い詰められた結果として生まれた可能性があります。

ではMILGRAMは、ミコト本人を裁くのか、それとも、もう一人を裁くのか。
はたまた、同じ身体を持つ以上、まとめて一人として裁くのか。

ミコトという囚人は、MILGRAMの「殺人者を裁く」という仕組みそのものへ、難しい問題を突きつけているように感じます。

ミコトを赦すか

私は、ミコトを赦します。

12人もの人が亡くなったことを軽く見るつもりはありません。
被害者の人数だけを見れば、とても重大な事件です。
しかも中には、誰かを助けようとしたために殺された人までいました。

ただ、第三審まで見た時、私はその12件の殺人を、そのままミコト本人の意思によるものとして裁くことができませんでした。

ミコト本人は限界まで追い詰められ、二日間倒れていた。
その間に、別の人格が表へ出た。
ミコト自身には殺人の記憶がない。
目覚めた時には、自分の人生をもう少し自由に生きようと思い始めていた。

そのミコトへ「お前は12人殺したのだから罰を受けろ」とだけ言うことには迷いがあります。

もちろん、同じ身体で起きた出来事です。
だから完全に無関係とも言えません。
それでも、本人の意思や認識が存在しない行為まで、すべて同じ責任として負わせることには違和感が残りました。

そのため、私はミコトを赦します。

直後の情報をMILGRAMへ保存

第三審資料の三枚目では、自宅の玄関扉を開いた瞬間のミコトの情報がMILGRAMへ保存されています。

ミコトは2000年生まれ。

現時点までに明らかになった生年を並べると、

  • カズイ:1974年
  • シドウ:1992年
  • ハルカ:1997年
  • アマネ:1998年
  • マヒル:1998年
  • フータ:1999年
  • ミコト:2000年
  • ムウ:2001年
  • ユノ:2004年

となります。

ミコトの場合は、二日間の空白を経て仕事を失い、それでもこれから自由に生きようと思い始め、自宅の玄関を開けた瞬間。
その先に警察官が立っている、まさに事件の結果と対面する直前の情報が保存されたことになります。

今後も第三審資料で、生年と保存された時点を確認していきます。

まとめ|ミコトが知らない二日間に、12人が亡くなった

第三審「レクイエム」で明らかになったのは、ミコトが限界を迎えた二日間でした。

それまで挫折らしい挫折を経験せず、周囲との距離を取ることも上手かったミコト。
しかし大手広告代理店へ入社したことで、初めて自分一人では処理できない状況へ追い込まれます。

助けてと言えない。
できないと言えない。
母親にも心配をかけたくなくて嘘を吐く。

そして、ついに倒れてしまいました。

その間に現れたもう一人は、怒号とも、泣き声とも、産声とも取れる声を上げながら、金属バットで12人の命を奪いました。

二日後。
ミコト本人は目を覚まします。
仕事は失っていた。
身体は重い。
でも、不思議と心は以前より軽い。

それなら、これからはもっと自由に生きてみよう。

そう思って身支度をし、玄関を開けます。

そこには警察官がいました。
ミコト本人にとっては、やっと自分の人生を始めようとした瞬間。
しかし現実では、自分が知らない二日間の責任を突きつけられる瞬間でした。

もう一人は、ミコトが抱えきれなかった感情を引き受けていたのか。
第三審で感じる喪失感は、その存在を失ったからなのか。
そして最後に残る荒々しい声は、彼がまだミコトの中にいることを意味するのか。

まだ分からない部分は残っています。
ただ、第三審で一つ強く感じたのは、ミコト本人が何もしていないから簡単に無罪とも言えず、同じ身体で12人が死んだから簡単に有罪とも言えない。ということでした。

ミコトは、MILGRAMという裁判そのものの難しさを最も分かりやすく突きつける囚人の一人なのかもしれません。

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更新

2026年7月15日公開のミコト第三審MV「レクイエム」まで視聴した時点の感想・考察です。

公式では第三審シングル「レクイエム」として公開され、カバー楽曲「キメラ」、Voice Drama「The One」などが収録されています。

第三審の後続囚人の内容は、本文の考察には使用していません。

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