『MILGRAM -ミルグラム-』囚人番号001番、櫻井遥の第三審。
第一審「弱肉共食」、第二審「全知全悩」と続いてきたハルカですが、第三審には楽曲タイトルがありません。
公式MOVIEでも「囚人番号001番『櫻井 遥』第三審」とだけ掲載され、第三審のシングル一覧にもハルカの楽曲は存在しません。2025年3月19日に公開されています。
そして実際に始まったのも、歌ではありませんでした。
第三審開始通達で明かされた通り、ハルカはすでに死亡しています。
今回映し出されるのは、死へ向かう直前のハルカとムウのやり取り、そしてハルカがそこへ至るまでの生育歴と事件の記録です。
第三審ハルカは「歌」ではなく記録映像
映像冒頭にはノイズが入り、監視カメラの記録を見るような雰囲気があります。
ハルカの部屋を訪ねてきたのはムウ。
ムウはハルカのために食事を持ってきていますが、以前置かれた食事も残っているように見えます。
つまりハルカは、かなり前から食べることを拒否していたのでしょう。
ムウがこのままでは死んでしまうと伝えても、ハルカの答えは明確でした。
そのつもりで食べていない。
第三審開始通達で語られた「ムウが赦されなければ死ぬ」という宣言は、脅しではありませんでした。
ハルカは本当に実行していました。
ハルカは「ムウを赦させる」ために死ぬ
なぜそんなことをするのか。
ハルカは、看守へ言ったからだと説明します。
ムウを赦さなかったら、自分は死ぬ。
そしてハルカは、自分が死ねばきっとムウは赦してもらえると信じています。
ここで印象的なのが、ハルカ自身が苦しそうに見えないことです。
むしろ、
誰かのために何かができる。
自分も変わった。
誰かの役に立つことができる。
そのことを幸せだと感じています。
「誰かの役に立つ」がハルカにとって初めての自己肯定になった
第二審開始通達では、第一審で赦されたハルカについて、自己肯定感と被支配欲求が強まり、ムウとの依存関係が成立したことが説明されていました。
今回、その関係がどこまで進んでいたのかが分かります。
ハルカは、ムウのために死ぬことすら、自分が役に立てる証明として受け入れている。
これは一般的な意味での自己犠牲とは少し違うように感じました。
誰かを助けるためなら自分が犠牲になってもいい、というだけではありません。
ハルカ自身が、自分には価値がある、自分にもできることがあると感じるために、ムウへ必要とされることが不可欠になっているように見えます。
最後に出てくるのは「お母さん」
ハルカはベッドにもたれた状態から、そのまま力を失うように倒れます。
その手にはネックレスのようなもの。
そして最後に出てくるのが、母親。
ムウのために死ぬと言っていたハルカが、最後に母親を思い浮かべる。
ここは重要だと思います。
第一審・第二審を通して、ハルカの根底にはずっと、
母親に見てほしい
認めてほしい
愛してほしい
という欲求があるように見えていました。
ムウとの関係も、その延長線上にあった可能性があります。
自分を必要としてくれる。
自分へ役割を与えてくれる。
自分が従うことを受け入れてくれる。
母親との間で得られなかった関係を、ムウとの間で別の形に作り直していたのかもしれません。
ムウはハルカの死を望んでいたわけではない
ここも大事です。
ムウはハルカへ食事を持ってきています。
死んでしまうと伝え、これでいいのかと確認もしています。
少なくとも今回の場面を見る限り、ムウがハルカへ「死んでほしい」と命じていたわけではありません。
ハルカ自身が、ムウのために死ぬという役割を選んでいます。
だからこそ、ハルカが倒れたあと、ムウはその場へ座り込みます。
そして看守へ責任を返します。
こうなることは分かっていたはずだ。
「酷いよ、看守さん」――ハルカの死は誰の責任なのか
今回の映像は、ハルカの最期を見せるだけではありません。
エスへ、これはあなたの判定によって起きたことだと突きつける映像にもなっています。
ハルカは「ムウを赦さなければ死ぬ」と宣言した。
それでもムウは赦されなかった。
ハルカは宣言を実行した。
ムウは、その結果を目の前で見ることになった。
もちろん、ハルカの死をすべてエスだけの責任にすることもできません。
ハルカ自身が選んだ行動です。
しかしMILGRAMでは、判定が人間関係や行動へ直接影響します。
だから、誰が悪いのかだけでは終われません。
自分の判断によって、その先に何が起きたのか。
第三審で問われているのは、そこなのだと思います。
ハルカの生育歴が明らかに
後半では、これまで断片的にしか分からなかったハルカの過去が、端的ではあるものの詳しく明かされます。
過保護だった両親と、本人に合わなかった教育
ハルカの両親は過保護だったようです。
しかし、我が子の成長が他の子供より遅いことを受け入れることができず、ハルカ本人のペースに合わせた教育を行いませんでした。
その結果、周囲との差は開き続けます。
15歳になった時点でも、漢字を十分に読むことが難しい状態だったとされます。
これは、元の「アンダーカバー」でハルカに対応すると考えられる部屋の映像とも繋がりそうです。
部屋には、ぬいぐるみや積み木のような、年齢に比べるとやや幼く見える物が置かれていました。
初見では意味が分かりませんでしたが、今回の情報を見ると、ハルカの発達や生活環境を示す映像だった可能性があります。
過保護から無関心へ
やがて両親の心が折れます。
それまでの過保護から、今度は無関心へ。
そして、この頃からハルカの異常行動が始まります。
問題行動を繰り返しても、両親の関心は戻りませんでした。
ハルカが求めていたものは、ずっと同じだったのかもしれません。
自分を見てほしい。
しかし普通の方法では、それを得ることができなかった。
小動物を殺し、他人の感情によって「繋がり」を知る
ハルカは隠れて小動物を殺すようになります。
やがて対象は大きくなり、飼われている猫や犬にまで及びます。
そして、殺されたペットを見て泣き叫ぶ人間を目にした時、ハルカは初めて、自分と他人が繋がっているという感動を覚えたようです。
ここで、第一審MVの「見てほしい」という印象が一気に繋がります。
ハルカにとって暴力は、相手を傷つけることそのものだけが目的ではなかったのかもしれません。
自分が何かをする。
その結果、誰かが強烈な感情を示す。
その瞬間、自分が相手へ影響を与えた、自分が相手の中に存在したと確認できる。
非常に歪んだ形ではありますが、ハルカは暴力を通して初めて他人との繋がりを実感したのだと思います。
警察の詰問すら「自分への興味」になった
やがて警備が強化され、ハルカの行動は発覚します。
しかし、ここでもハルカの受け取り方は普通とは違いました。
警察から問い詰められることを、自分へ興味を持ってもらえていると感じて興奮します。
さらに、自分のために両親まで呼び出されます。
両親が自分を見る。
警察も自分を見る。
周囲の人間が、自分の行動によって自分だけへ注意を向けている。
その興奮が頂点へ達し、ハルカはその場で失神したとされます。
ここまで来ると、問題行動を起こせば、自分を見てもらえるという学習が完全に成立してしまったように見えます。
翌日、ハルカは子供を殺した
そして翌日。
ハルカは、自分より明らかに無力な子供を殺します。
花火大会の日。
死体を隠しながら、ハルカ自身は泣いていたようです。
第一審「弱肉共食」に登場した女の子は、この被害者である可能性があります。
ただし、同じ場面にいた男の子については、まだ判断が難しいところ。
ハルカ本人だと思っていましたが、現在のハルカと比べるとかなり幼く見えます。
幼少期のハルカを重ねた象徴なのか。
被害者と関係する別の子供なのか。
この部分はまだ保留にしておきます。
後悔していた。それでも二人目を殺した
ハルカは、その事件を毎晩のように悔いて泣いていたようです。
つまり、罪悪感がなかったわけではありません。
人を殺したことを何とも思っていなかったわけでもない。
それでも、ハルカは二人目にも手をかけます。
ここはハルカを見るうえで重要です。
後悔する。泣く。それでも止められない。
ハルカの中では、
誰かと繋がりたいという欲求
注目を集めたいという欲求
自分の行為への罪悪感
が同時に存在していたのでしょう。
単純に「残酷だから殺した」では説明できない人物だったことが、第三審でかなり明確になりました。
ハルカの殺人と最期は、同じところから始まっていた?
今回の情報を見ると、ハルカの殺人とMILGRAM内での死は、全く別の行動ではないように感じます。
幼い頃からハルカが求めていたのは、
自分が他人へ影響を与えること。
自分を見てもらうこと。
誰かと繋がること。
自分にも価値があると感じること。
最初は、その手段が暴力でした。
誰かの大切なものを壊せば、その人は強く反応する。
人を殺せば、もっと多くの人間が自分を見る。
しかしMILGRAMでムウと出会ったあと、その形が変わります。
誰かを傷つけることで存在価値を得るから、誰かの役に立つことで存在価値を得るへ。
一見すると良い変化に見えます。
しかし根本にある、自分の価値を他者との関係だけで決めるという部分は変わっていませんでした。
その結果、自分の死すら、ムウの役に立つための手段になった。だからハルカは最後に笑っていたのかもしれません。
初めて、自分が誰かの役に立てたと思ったから。
「情報をMILGRAMに保存」とは何なのか
最後の情報には、気になる表現があります。
事件翌日の未明時点の情報を、MILGRAMへ保存したというもの。
「収監した」ではなく「情報を保存」。
この言い方は機械的です。
ここから先は大きな仮説になります。
囚人そのものではなく、人格や意識を保存している?
MILGRAMにいる囚人は、現実の肉体そのものではなく、ある時点までの人格・記憶・意識情報を保存し、監獄内で再現した存在なのではないでしょうか。
この仮説なら、これまで気になっていたものとも繋がります。
ミコトでは、MILGRAMが正規の囚人として認識しているのは主人格だけで、別人格へ拘束を適用できないという異常が発生しました。
もし「登録された人格情報」が囚人として扱われる仕組みなら、それも説明しやすい。
エスが審の間、毎回同じソファで眠り、次の審で再び起動するように見えることとも少し似ています。
MILGRAM内で死んでも、現実の本人は死んでいない?
さらに考えるなら、MILGRAM内でハルカが死亡したことと、現実世界の櫻井遥が死亡したことは同じではない可能性があります。
現実の人物から情報を保存。
その情報を使ってMILGRAM内で思想や行動を再現。
エスの判定によって変化させ、その結果を観察する。
そして最終的な判断を、現実側の本人へ何らかの形で適用する。
もしそういう仕組みなら、MILGRAMは巨大なシミュレーション実験にもなります。
現時点では完全な仮説ですが、「情報を保存」という表現は今後も覚えておきたいところです。
「Route」は本当に分岐ルートなのか
この仮説を考えると、「アンダーカバー [Route: Your (Curtain) Call]」のRouteもさらに気になります。
現在の第三審は、私たちが実際に下した判定によって到達した一つのルートなのではないでしょうか。
実際、判定が違えば現在の状況も変わっていました。
たとえば第二審でムウを赦していれば、少なくともハルカが今回の理由で死ぬ必要はなくなります。
第一審でコトコを赦さなければ、コトコは身体的自由を与えられず、フータやマヒルへの私刑も起こらなかった可能性があります。
負傷者が出なければ、シドウが治療する必要も減る。
シドウの医療行為が起きなければ、それを教義に反するものとしてアマネが敵視する流れも変わるかもしれない。
一つの判定が、次の出来事を大きく分岐させています。
「全員赦す」が正解とも限らない
重要なのは、別ルートなら全員助かるとは限らないことです。
全員を赦せば、それぞれの思想が自由になります。
その結果、別の囚人同士の衝突が起こる可能性もある。
反対に、全員を赦さなければ、強い思想否定と身体拘束によって別の崩壊が起きるかもしれません。
つまりMILGRAMには、誰も死なない正解ルートが存在するとは限らない。
むしろ、あなたが何を選び、その結果どんな監獄になったのかを見ること自体が目的なのかもしれません。
「Route: Your (Curtain) Call」。
あれが本当に、あなたが選んだ結果として成立したルートを意味しているなら、これもまた面白い構造です。
第三審ハルカで分かったこと
第三審のハルカでは、これまで謎だった部分がかなり明らかになりました。
- ハルカはムウを赦させるため、意図的に食事を拒否して死亡した
- 本人はその死を「誰かの役に立てる」行為として幸福に感じていた
- ムウが死を命じたわけではなく、むしろ食事を持って止めようとしていた
- ハルカの根底には最後まで母親への思いが残っている
- 両親は当初過保護だったが、発達の遅れを受け入れられず、後に無関心へ変化した
- ハルカは他人の強い感情を引き出すことで「繋がり」を実感するようになった
- 小動物からペット、そして人間へと殺害対象が拡大した
- 犯行への後悔や罪悪感は存在していた
- それでも二人目の殺害を止めることはできなかった
- MILGRAMは事件後の「情報を保存」しているらしい
第一審では「なぜ殺したのか」。
第二審では「なぜ赦されたかったのか」。
第三審ではようやく、ハルカという人間が、なぜそこまで他人に自分の価値を求めるようになったのかがかなり具体的に見えてきたと思います。
まとめ|ハルカは最後まで「誰かと繋がりたかった」
第三審のハルカを見て、一番強く感じたのはこれでした。
ハルカが求め続けていたものは、誰かとの繋がり。
小動物を殺した時も。
他人のペットを殺した時も。
人を殺した時も。
ムウへ従った時も。
そして、自分自身を死なせた時も。
方法は大きく変わっていても、自分の存在が誰かに届いたと確認したいという欲求は、ずっと変わっていなかったのではないでしょうか。
最後のハルカは、自分がムウの役に立てると信じています。
だから幸せだと言う。
だから笑っている。
しかし、自分自身のために生きる価値を見つけることは、最後までできなかった。
第一審で赦したことも。
第二審で赦さなかったことも。
どちらもハルカへ影響しました。
そして、その積み重ねの先に今回の死があります。
これは「ハルカが死んだ」という結果だけではなく、私たちが選んだルートで、ハルカがどのように死へ辿り着いたのかを見せる第三審だったのだと思います。
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2025年3月19日公開の囚人番号001番「櫻井 遥」第三審まで視聴した時点の感想・考察です。
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第三審の後続囚人の内容は、本文の考察には使用していません。
