映画『バックルームズ』について調べると、レベル、エンティティ、ノークリップ、Async、M.E.G.など、多数の用語が見つかります。
しかし、それらはすべて同じ作者が作ったひとつの設定ではありません。
バックルームズは2019年の匿名投稿を原点として、Wikidot、Fandom、Kane PixelsのYouTubeシリーズ、ゲーム、映画が、それぞれ別の方向へ発展してきました。
このページでは、各系統を混同しないために、映画版との違いを整理します。
最初に|「原作」ではなく「元ネタ」と呼ぶ理由
映画の原作となる長編小説や、ひとつの完成したゲームが先に存在したわけではありません。
原点は、一枚の画像と短い文章です。
その後、多数の参加者による共同創作と、個人クリエイターによる独自映像作品が生まれました。
そのため本記事では、2019年の投稿を「元ネタ/原点」、各Wikiを「コミュニティ共同創作」、ケイン・パーソンズの作品を「Kane Pixels版」と呼びます。
五つの系統を比較
| 項目 | 2019年の元ネタ | Wikidot版 | Fandom版 | Kane Pixels版 | 2026年映画版 |
|---|---|---|---|---|---|
| 作り手 | 匿名投稿 | 多数の参加者 | 多数の参加者 | ケイン・パーソンズ | ケイン・パーソンズ監督、ウィル・スーディク脚本ほか |
| 形式 | 画像と短文 | 共同創作Wiki | 共同創作Wiki | YouTube映像シリーズ | 長編映画 |
| 主な怖さ | 理由なく迷い込む | レベル・生存・探索 | レベル・生存・探索 | 調査記録と異空間 | 人間関係、役割、執着、空間の複製 |
| レベル制 | 明示なし | 多数存在 | 多数存在 | Wiki式とは異なる | 明確な番号攻略ではない |
| 組織 | なし | 系統ごとに存在 | 系統ごとに存在 | Async | Async |
| 怪物 | 何かの存在を示唆 | 多数 | 多数 | 独自の生命体 | スティルライフ、海賊クラークなど |
| 中心人物 | なし | 記事ごとに異なる | 記事ごとに異なる | 研究員・遭難者 | クラーク、メアリー、フィル |
2019年の元ネタと映画版の違い
元の投稿は、なぜその空間があるのか、誰が研究しているのか、怪物が何者なのかを説明しません。
映画版は、その不明さを残しながら、家具店、Async、スティルライフ、クラークとメアリーの心理を加えています。
映画公式が紹介する、黄色い壁紙、終わらない廊下、不自然な間取り、意味を失って床へ埋まった設置物は、元ネタの「現実に似ているが少し間違っている」という感覚を長編映画へ広げたものです。
Wikidot版と映画版の違い
Wikidot版は、レベル、エンティティ、アイテム、団体、人物、物語を多数の参加者が投稿する共同創作サイトです。
内部には複数のCanonがあり、ある記事の設定が別の物語でも有効とは限りません。
映画に出てこないレベル番号や組織を、映画の答えとして持ち込まないよう注意が必要です。
Fandom版と映画版の違い
Fandom版も、レベルやエンティティを扱うコミュニティ共同創作Wikiです。
Wikidot版と同じサイトの別表示ではなく、別の共同創作系統です。同じ名称や番号が使われていても、内容や歴史が一致しない場合があります。
映画記事で引用する場合は「バックルームズの公式設定では」ではなく「Fandom版では」と出典を限定します。
Kane Pixels版と映画版の関係
Kane Pixels版は、1980年代末から1990年代初頭の調査記録、監視映像、社内資料などをつなぎ、AsyncがComplexを研究する様子を描きます。
公式プレスノートによると、映画のAsyncは、YouTubeシリーズで描かれた1989年の出来事を受けてComplexを調査しています。
映画にはシリーズの物語や人物へのコールバックも含まれます。
したがって映画は、WikidotやFandomのレベルを実写化したものではなく、Kane PixelsがYouTubeで作ってきたAsyncとComplexの系統を映画として広げた作品と考えるのが自然です。
ただし映画は、クラークとメアリーを中心にした新しい物語です。
YouTubeシリーズをすべて見ていなくても、映画単体で鑑賞できる構成になっています。
映画で新しく強調されたもの
スティルライフ
映画では、空間が建築物や家具だけでなく、人間らしい形まで作り直す可能性が強調されます。
ただし、完成した人間の複製ではありません。顔、身体、家具との境界、反応などが間違っています。
人間の形《なり》と役割
クラークは家具店主、海賊、夫、失敗した建築家という複数の役割を持っています。
メアリーは娘、セラピスト、クラークの元妻役、Asyncの研究対象という役割を与えられます。
バックルームズは本人の記憶だけでなく、人がどこに座り、誰と関わり、何者として扱われていたかまで、不完全に複製しているように見えます。
人間自身が作る煉獄
監督は公式インタビューで、バックルームズを、人間が自ら作りつつある煉獄のような場所として語っています。
ただし、罪に応じて裁かれる宗教的な地獄とは限りません。
監督は別のインタビューで、それを魂の試練ではなく、誰にでも偶発的に起こり得る自然現象に近いものとしても説明しています。
クラークやメアリーの傷が空間へ反映されても「悪い人だから落とされた」とは断定できません。
ゲーム版はどの設定?
バックルームズを題材にしたゲームは多数あり、それぞれが異なる設定を採用しています。
共同創作Wikiのレベルを参考にする作品もあれば、黄色い部屋と追跡者だけを使う作品、独自の物語を加える作品もあります。
ゲームで見た怪物が映画に出ない、映画のスティルライフがゲームの図鑑にいないとしても、設定矛盾とは限りません。
まとめ
映画『バックルームズ』を考察する時に、最も重要なのは出典を分けることです。
- 元画像と投稿文にあったこと
- Wikidot版に書かれたこと
- Fandom版に書かれたこと
- Kane Pixelsの映像に出たこと
- 映画本編に出たこと
- 16分追加映像『Everything Must Go』に出たこと
この区別ができれば、別系統の設定を映画の確定情報として扱わずに済みます。
一方で、似た設定を比較し「映画ではなぜ違う形になったのか」を考える楽しみも生まれます。
