大森時生は、テレビ番組らしい安心感のなかへ説明しにくい違和感を紛れ込ませる作品を手がけてきたテレビ東京のプロデューサーです。
生活情報番組、クイズ番組、自己啓発番組、公開捜索番組など、誰もが一度は見たことのある映像の形式を借りながら、視聴者に「これはどこまで本当なのか」「番組を見ている自分は安全なのか」と考えさせます。
近年はテレビだけでなく、配信ドラマ、舞台、展覧会、劇場映画にも活動の範囲を広げています。
このページでは、大森時生が企画・演出・プロデュースなどで携わった主なモキュメンタリー、ホラー、考察型作品を年代順に紹介します。
通常のバラエティー番組における担当作をすべて掲載するのではなく、当ブログの「テレビ発モキュメンタリー・考察ドラマ」とつながる作品を中心にまとめています。
テレビ・映像作品を年代順に紹介
『Aマッソのがんばれ奥様ッソ!』|2021年|BSテレ東
悩みを抱える奥様を芸能人が応援する生活情報バラエティーの形式で始まり、
回を追うごとに番組と家庭の不自然さが浮かび上がる全4回の作品です。
明るいテレビ番組の文法を崩す、大森時生作品の入口として観やすい一本です。
『Raiken Nippon Hair』|2022年|テレビ東京
架空の国で放送されている、架空の言語によるクイズ番組として作られた映像作品です。
言葉を直接理解できないのに、日本の芸能ニュースが問題として使われることで内容を推測できるという、テレビの形式と視聴者の思い込みを利用した作品です。
「テレビ東京若手映像グランプリ2022」で優勝し、のちに特番化されました。
『島崎和歌子の悩みにカンパイ』|2022年|テレビ東京
島崎和歌子の悩みを酒と料理でもてなして解決しようとするバラエティー特番です。ホラーやモキュメンタリーではありませんが、『Raiken Nippon Hair』のグランプリ優勝を受けて制作された記念特番であり、大森時生のテレビ演出を知る関連作として挙げられます。
『このテープもってないですか?』|2022年|BSテレ東
現存しない過去のテレビ番組を録画したビデオテープを募集し、出演者がスタジオで確認していく全3回のフェイクドキュメンタリーです。
VHSに残された番組と現在の収録が少しずつ結び付き、出演者も視聴者も安全な観察者ではいられなくなります。
『SIX HACK』|2023年|テレビ東京
会議や仕事に役立つ「偉くなるためのハック」を紹介する自己啓発番組として始まり、放送や番組そのものが不安定になっていく全3回の作品です。
本編だけでなく、告知、放送事故風の映像、公式の関連動画まで含めて追うことで全体像が見えてきます。
Aマッソ単独ライブ『滑稽』|2023年|舞台・映像
Aマッソの漫才・コントとフェイクドキュメンタリー映像を組み合わせ、劇場にいる観客まで作品の構造へ巻き込んだライブです。
大森時生は企画・演出を担当。テレビ画面の外にいる観客の位置まで揺らす、のちのイベント・展示作品にもつながる試みとして紹介できます。
『祓除』|2023年|テレビ東京・イベント
テレビ東京の倉庫に保管されてきた映像や物品の「穢れ」を無害化するため、公開の場で祓いの式典を行うというプロジェクトです。
事前番組、横浜赤レンガ倉庫でのイベント、事後番組へと続き、テレビ放送だけでは完結しない体験を作りました。
TXQ FICTION|2024年~
TXQ FICTIONは、テレビ東京での放送とTVerなどの配信、YouTubeの公式動画を組み合わせて展開されるフェイクドキュメンタリーシリーズです。
一つの固定した世界を追う連続ドラマではなく、作品ごとに題材や映像形式が変わるため、気になるタイトルからでも観られます。
YouTube側のまとめページには、第1弾から第5弾までの正式タイトル、全話、各話の視聴時間、公式動画へのリンクを掲載しています。
第1弾『イシナガキクエを探しています』|2024年
長年一人の女性を捜し続ける男性と、過去の公開捜索番組を起点に、「イシナガキクエ」という存在を追う全4話です。写真、証言、記録映像が少しずつ重なり、捜しているものの意味が変化していきます。
第2弾『飯沼一家に謝罪します』|2024年
ある男性が飯沼一家へ謝罪する過去のテレビ番組らしき映像から、何に対する謝罪なのか、なぜ番組が作られたのかをたどる全4話です。
過去の素材と現在の検証が行き来し、説明されない部分が不安を膨らませます。
第3弾『魔法少女山田』|2025年
テレビ番組、映画、記録映像など、異なる目的で撮られた素材を通して「魔法少女山田」をめぐる出来事へ近づく全3話です。
同じ題材が媒体によってどう変形するのかを比べながら観る楽しさがあります。
第4弾『UFO山』|2025年
UFOをめぐる目撃証言、過去の記録、取材映像を重ねながら、一つの山にまつわる出来事を追う全4話です。空を見上げる行為と、映像を信じる行為が結び付く作品として楽しめます。
第5弾『神木隆之介』|2026年
俳優・神木隆之介が本人役で出演し、10歳で姿を消した子役「てるちゃん」の足跡を追う全4話です。
実在する俳優の経歴と番組内の記録が隣り合い、現実とフィクションの境界を意図的に揺らします。
配信ドラマ・映画
『フィクショナル』|2024年|BUMP・劇場公開
憧れていた大学時代の先輩との再会と共同生活から始まる、一話約1~3分のショートドラマです。
恋愛ドラマの外見を持ちながら、ディープフェイク映像を作る仕事と、その影響に向き合う人物を描きます。
酒井善三監督と大森時生が『このテープもってないですか?』『SIX HACK』に続いて組み、配信後には劇場でも公開されました。
映画『遺愛』|2026年|劇場映画
父の死をきっかけに母の介護を始めた女性の周囲で、説明できない異変が起きていく長編映画です。
家族への愛情、介護による疲弊、呪いなのか心が生んだ虚構なのか分からない恐怖を描きます。
監督は酒井善三、大森時生は企画プロデュースを担当し、初の劇場長編映画プロデュース作となりました。
展示・体験型プロジェクト
『行方不明展』|2024年~
貼り紙、遺留品、都市伝説など、「行方不明」にまつわる架空の物品と情報を集めて分類・展示する体験型企画です。
ホラー作家・梨、株式会社闇、大森時生が企画し、東京での初開催後、各地へ巡回しています。
展示物を一つずつ見るだけでなく、異なる資料のつながりを来場者自身が考える構成です。
『恐怖心展』|2025年~
先端、閉所、視線など、人が物事に対して抱く説明しにくい恐れや不安をテーマにした展覧会です。
梨、株式会社闇、大森時生が『行方不明展』に続いて企画。恐怖を退治するのではなく、展示された状況や感覚を観察する体験として作られています。
大森時生作品の特徴
大森時生作品では、最初から「これはホラーです」と説明されないことが少なくありません。
生活情報番組、クイズ、自己啓発、公開捜索、恋愛ドラマなど、視聴者が見慣れた形式を正確に再現することで、そこから少しだけ外れた言葉や映像を強い違和感へ変えています。
また、一つのテレビ番組だけで答えをすべて説明せず、公式サイト、配信動画、告知、イベント、展示などへ情報を分散させる作品もあります。
そのため、視聴者は物語を受け取るだけでなく「どの情報を信じるか」「自分はなぜこの映像を見続けているのか」を考える立場になります。
テレビ外のクリエイターと組む点も特徴です。
酒井善三、梨、寺内康太郎、皆口大地、近藤亮太、ダ・ヴィンチ・恐山、Franz K Endoなど、映像、怪談、Web、デザインの異なる文脈を持つ制作者が参加することで、通常のテレビ番組とは違う触感が生まれています。
初めて観る人へのおすすめ
- 明るい番組に混ざる違和感を味わいたい:『Aマッソのがんばれ奥様ッソ!』
- VHSや失われた番組が好き:『このテープもってないですか?』
- 短いシリーズから入りたい:『フィクショナル』
- 王道のフェイクドキュメンタリーを観たい:『イシナガキクエを探しています』
- 放送外の映像まで追って考察したい:『SIX HACK』
- 現地で資料を見ながら考えたい:『行方不明展』『恐怖心展』
- 一本の映画として家族と恐怖を味わいたい:『遺愛』
視聴・記事作成時の注意
配信作品や過去番組は、TVerなどで期間限定公開される場合があります。
現在見られない作品については無断転載へ誘導せず、再配信が確認できた時点で公式URLと確認日を追記します。
TXQ FICTIONは公式YouTube動画があるため、各作品の動画一覧ページから直接視聴できます。
個別の感想・考察記事をまだ公開していない作品は、このページから存在しないURLへリンクしません。
記事を作成したあとに、作品名または「感想・考察」の文字へ固定スラッグを設定する運用にします。
こんな人におすすめ
- テレビ番組の文法を利用したホラーが好き
- 一見普通の番組に混ざる違和感を探したい
- TXQ FICTION以前の大森時生作品を知りたい
- テレビ、配信、舞台、展示を横断する作品を追いたい
- 制作陣のつながりから次に観る作品を選びたい
- 一度観たあとに細部を見直す考察型作品が好き
更新履歴
- 最終更新日:2026年8月27日
